昨年2009年4月、名称変更後初となる東京都市大学の入学式が挙行され、併せて『水素燃料エンジンバス』の完成が発表された。
水素燃料エンジンは、水以外の排出物を出さない、低炭素社会実現の切り札。同大学は、およそ40年前に日本で初めて水素エンジンの運転に成功して以来、この分野のパイオニアであり、トップランナーだ。今回の水素バスでは、国土交通省からナンバープレートを取得し、日本で初めて公道走行を実現。(外装デザインは同大学と2008年より連携関係にある多摩美術大学の学生が手がけている。)
このバスは、2009年9月下旬から10月中旬まで、環境交通社会実験協力のため丸の内〜銀座〜日本橋周辺を循環して注目を集めた。この後、連携関係にある国立大学室蘭工業大学と協働 して同年10月下旬より約1ヵ月間、北海道室蘭市において走行試験が行われた。走行距離は約800`bに及び、水素エンジンにとっては北海道の初冬、時折、雪、霙の降る中や急坂の多い地形など厳しい環境条件の走行が続いたことで貴重なデータが収集できたという。そのデータは、東京都市大学において検証され、さらなる改良に向け研究は継続中だ。
環境交通社会実験協力のために東京駅周辺を走行する水素エンジンバス(2009年10月)
ナンバープレートを取得し公道走行が可能となった
水素燃料エンジンバス
東京都市大学は、都市大グループ内での連携強化に加え、他大学との包括連携協定等を積極的に推進している。対外的なコラボレーションを積極的に進めることにより、教育研究領域をスピーディーに拡大し、さらに進化を目指す同大学の戦略的特色と言えるだろう。
先に紹介した北海道の室蘭工業大学とは、水素エネルギー分野の研究を中心に連携を進めているが、2007年12月に包括連携協定を締結。国立大学と私立大学の連携協定は、全国で初のケースだった。(2008年度には文部科学省「戦略的大学連携支援事業」に、「遠隔に立地する大学の教育・研究活動の連携―水素エネルギー研究協力を契機にして」が採択されている。)
2008年3月には、多摩美術大学、昭和大学とそれぞれに包括連携協定を締結した。多摩美術大学とは、工学と芸術(デザイン)との融合による教育の充実を、昭和大学とは医療工学の領域で“医工連携”を推進している。
2009年4月には、早稲田大学と「大学間交流に関する包括協定書」を締結し、本年度からの共同大学院「共同原子力専攻」への開設(次頁にて紹介)へと繋いだ。
また、2010年3月26日には、東京大学生産技術研究所と学術連携に関する覚書を締結した。基幹技術者の育成に長年の実績を持つ東京都市大学と、最先端研究、産学連携に実績を持つ東京大学生産技術研究所が、若手人材の育成や研究協力を進めるとのことだ。