進化し続ける東京都市大学Vol.2

『都市生活学部』開設シンポジウムを実施。学部女子学生によるユニークな地域振興策も進行中。

大学から幼稚園までを擁する「東京都市大学グループ」。その中核となる東京都市大学(旧 武蔵工業大学 2009年4月より名称変更)では、従来からの『工学部』『知識工学部』『環境情報学部』に加えて、新たに今年度『都市生活学部』と『人間科学部』の文系2学部を開設し、5学部16学科を擁する総合大学へと進化した。今回は、世界でも類例のない独創的な教育・研究を推進する、新設『都市生活学部』の最新動向をフィーチャーする。

世界でも類例のない『都市生活学部』

都市文化・都市経営・都市居住の3専門領域を、多角的に教育・研究する

【都市文化】【都市経営】【都市居住】

様子

都市の文化を、街の空間を、住環境を、デザイン(企画)し、マネジメント(実現化)するための、知識、スキル、経験を体系的、実践的に学ぶ

 2009年4月1日、創立以来80年の歴史を有し、日本の産業発展に貢献してきた武蔵工業大学は、その名を『東京都市大学(都市大)』へと改め、従来の工学部、知識工学部(以上、世田谷キャンパス)と、環境情報学部(横浜キャンパス)に加え、等々力キャンパスに人間科学部と都市生活学部の文系2学部を開設した。

 都市生活学部は、同大の実業界における長年の実績をもとに、社会科学的視点で“街と文化を創造する”人材の育成を目指して新設された(定員150名)。都市文化・都市経営・都市居住の3分野について教育研究する、日本はもちろん、世界的にも類例のない独創的な学部で、経営学、経済学、社会学、法学、建築学、都市工学、デザインなどに関する専任教員の他、実社会で活躍中の多彩な分野のプロフェッショナルを教員に配している点も特徴的だ。現在、都市部に居住する人口は、日本全体のおよそ7割に達している。“都市”を総合的かつ専門的に学ぶことは、すなわちわが国全体、ひいては世界全体を新しい視点で包括的に捉え直すことであり、その意味でも新学部の創設は意義深いことと言えるだろう。

都市生活学部開設シンポジウムを実施

都市を“つくる”時代から街を“育てる”時代へと変化

都市生活学部開設シンポジウム様子都市生活学部開設シンポジウム様子

関係者200人を集めて開催された都市生活学部開設シンポジウム。 学部が目指す新しい時代の人材育成に大きな期待が寄せられた。

 この都市生活学部の開設を記念するシンポジウムが、11月17日(火)、セルリアンタワー東急ホテルで開催された。

  開会挨拶に立った都市大の中村英夫学長は、「都市生活学部を本学の中核的な学部へと育てていきたい」と、力強い意気込みを披瀝。日本建築学会会長の佐藤滋氏、日本都市計画学会会長の武内和彦氏、同大OBでもあるセコム(株)代表取締役社長の原口兼正氏、東急不動産(株)代表取締役会長の植木正威氏の来賓挨拶後、平本一雄都市生活学部長によって同学部の教育目標や特色などが紹介された。

 続いて、国際的に活躍する建築家で東京大学教授の隈研吾氏、都市プロデューサーの北山孝雄氏、三菱地所(株)執行役員の合場直人氏、マーケティングプロデューサーとして知られる谷口正和 都市大客員教授、エリアマネジメントのパイオニアである小林重敬 同大教授の5名をパネリストに迎え、平本学部長をコーディネーターとした『都市づくり、街育ての新潮流』と題するシンポジウムがスタート。「これからの都市には、ハードを整備する工学的発想だけでなく、ソフトを駆使して街を育てていく視点が不可欠」、「単に都市を“つくる”時代は終わっている。その地域に関わる人たちが集まって、都市を“育てる”時代、マネジメントする時代である」、「今後は建築家やマーケッターといった境界を超え、柔軟かつ新しい発想で都市づくり、街育てをコーディネートできる人材が不可欠」などの見識が示された。

  同学部では教員有志が20年後の渋谷のあるべき姿を模索した研究論文、『渋谷クリエイション2030』を2009年9月に発表しているが、シンポジウムではこのリサーチの有効性にも言及。ユニークなアプローチで都市づくりの人材育成と研究に取り組む都市生活学部に対する期待感の大きさは、パネリスト全員の共通認識となったようだ。

研究論文イメージ 都市生活学部教員による研究論文
『渋谷クリエイション2030』。渋谷地域の現状分析に基づいて、そのライフスタイルと文化、ストリートの景観デザイン、都市環境、ブランディングなど、多角的に20年後の渋谷像に肉迫している。

女子学生が“庄内柿”をプロデュース

女子学生の豊かな感性を生かして伝統の地域産品をプロデュース

都内で開かれた品評会では、およそ20品目を試食。業者からは「名前も味もすばらしい。感動した」と絶賛の声が上がり、学生たちは自ら考案に携わった試作品の出来栄えを確かめた。

 都市生活学部では、実際の地域振興などを通し、より実践的な教育研究が進められている。そのひとつが、山形県酒田市特産“庄内柿”のプロデュースだ。
  庄内柿は、品質が高いにも関わらず出荷時期が遅いため、他産地の柿と比べマーケットシェア・認知度ともに低迷している状況にあり、東京を中心とした都市部のニーズに対応した商品が少ないという問題も抱えている。そこで、(社)酒田観光物産協会と同学部が連携し、庄内柿を使った新たな商品開発プロジェクトをスタートさせ、認知度向上と販路拡大を進めることとなった。この事業は、地方活性化を目的とした地域活動を内閣府・内閣官房が支援する『地方の元気再生事業』のひとつ。現在、同学部小松史郎教授(集客都市論)が指導する女子学生と東京都立晴海総合高等学校の女子生徒、およそ20人が協働し、その感性や発想を生かして市場調査や庄内柿を使ったお菓子などの開発、ネーミング、パッケージデザインなどを検討しているところだ。

 9月に酒田市産業会館で開かれた第2回目の研究会合では、同学部女子学生が食品業者らに進行状況を報告。11月25日(水)に、東京都内で開かれた品評会では、彼女たちの提案を生かしたアイデア満載の試作品─“ビスケット生地で柿クリームをサンドした「パシモンサンド」、干柿を星形にくりぬいた「お星☆がき」、柿の味を生かした水まんじゅう「柿の雫」”─など約20品目が披露され、高評価を得た。

  同学部1年の近藤奈穂さんは、「たくさんの人と協力しながら商品をつくりあげるのは、何よりの勉強になる」と語る。

  2010年1月下旬に東京・銀座の山形県アンテナショップ「おいしい山形ぷらざ」で完成商品のPRイベントを行う予定。その“新食感”を、ぜひ味わってみたいものだ。

 これからも都市生活学部のユニークな取り組みに注目が集まることだろう。

「都市」で学ぶ。「人」を育てる。「未来」を築く。東京都市大学/付属中学校・高等学校/等々力中学校・高等学校/塩尻高等学校/付属小学校/二子幼稚園